症例のご紹介

2013年7月29日 月曜日

胆石による胆管閉塞性黄疸で胆嚢切除。

土曜日の夜に、胆石による胆管閉塞性黄疸で胆嚢切除を行いました。
症例は13歳のトイ・プードル、避妊雌で、実は私の家族(愛犬)メリーちゃんでした。。。
6年前に胆泥が溜まっている事に気付き、内科治療で臨床症状もなくずっとコントロールできていたのですが、数日前から食欲が低下。嘔吐は一度だけでしたが、少し尿が濃くなったので血液検査とエコー検査で胆嚢の腫大と肝酵素の著増、黄疸が確認されました。入院下での強化した内科治療を1日行いましたが、黄疸や肝酵素上昇が進行したため、すぐに手術を行いました。
これまでに経験していた胆嚢破裂やひどい胆嚢炎の症例に比べると比較的簡単なレベルでしたが、それでも胆嚢と横隔膜が癒着していたりして少し手間取ってしまいました。

腫大した胆嚢が肝臓を圧迫しているようにも見えます。


肝臓から胆嚢をはがし、これから胆管につまった胆石を
洗い流すところです。


摘出した胆嚢。胆汁は事前に抜いています。


多数の胆石と大量の胆汁が溜まっていました。

最近、胆嚢粘液嚢腫や胆石、胆泥症などのワンちゃんが昔よりも増えてきて、内科治療でコントロールしているケースも多いのですが、やはりいずれこのような事になるのなら、早めに胆嚢切除を検討するべきなのか!?...って思いました。
症状のないケースで胆嚢切除が必要かどうかは迷いますが、様々な状況も考えながら、今後も必要に応じて手術が行えるように頑張りたいと思います。

投稿者 西京極どうぶつ病院 | 記事URL

2013年7月23日 火曜日

熱中症にご注意下さい!

今回は外科疾患ではありませんが、これからの時期ますます要注意になる熱中症(内科疾患)についてピックアップしてみました。

ペット保険のアニコムが「STOP 熱中症プロジェクト」というものを立ち上げ、熱中症に対する情報を公開しています。非常に大事な情報もあるので、お時間がある時に是非見てみて下さい。
ちなみに、下記の画像のような「熱中症予防のチェックリスト」みたいなものも作られているので、危険度が高い子たちはよりシビアに管理してあげてもらえればと思います!




アニコムのFacebookページでも紹介されている情報を見て、勉強になった事を書いておきます。
最新式の人感センサー付きのエアコンでの話ですが、人感センサーは小型犬や猫のような小さい動物では反応しない事があるようです。そのため、しっかりとエアコンをつけていったつもりが自動的にオフになって室内の温度が高くなっているケースもあるようです。これからの時期、日中の熱さは尋常ではなくなるのでこのような事がないように十分注意が必要かと思います!!!

熱中症に陥ってしまっている場合、その対応は時間との勝負であり、様子を見れば見るほど手遅れになってしまいます。グッタリするようなレベルの熱中症を見つけた場合はすぐに動物病院に連絡してもらい、救急対応を受けるようにして下さい。

投稿者 西京極どうぶつ病院 | 記事URL

2013年7月14日 日曜日

慢性口内炎の猫の全臼歯抜歯をしました。

先日、慢性口内炎によって食欲が落ちている猫の全臼歯抜歯を行いました。
猫の慢性口内炎は難治性疾患のひとつで、抗生剤や消炎剤、インターフェロン、ステロイドや免疫抑制剤などの薬剤を使ったり、口腔内環境を良くするようなペーストや塗り薬を使う事もありますが、それでもうまくコントロールできない場合には外科的な対応も検討します。
今回行った全臼歯抜歯は、70~80%くらいの猫ちゃんで何らかの改善効果が見られるため、全身麻酔に耐えられる体力のある個体であれば検討する必要があるかと思います。
犬歯まで抜く全額抜歯という術式もありますが、犬歯がなくなるととても痛々しい事やよりも手早くできる術式という意味でも全臼歯抜歯の方がメリットがあるかと思っています。

 downwardleft抜歯前:歯石の付着、歯肉炎、口角部の炎症がひどく、食欲は落ちています。



downwardright抜歯後:抜歯した傷跡が痛々しい状況ですが、
     これからどんどん食欲がでてくれると信じています。



以前、病院の方のブログでもアップしましたが、この子は今でも元気いっぱいにごはんを食べていて、以前よりも体重が増えてしまって大変との事です。。。
http://www.n-animalhospital.com/blog/2012/06/post_226.html


この手術は内科的な治療ではうまくコントロールできない時に行うものかと思っていますが、早めに行った方が痛みで苦しむ期間も短くなるのかもしれないため、どの時点で行うかはまだまだ検討すべき課題かと思っています。。。

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2013年7月10日 水曜日

猫の乳腺癌(充実性乳腺癌)

先日、猫の乳腺癌(病理診断名は充実性乳腺癌)の手術を行いました。
中年齢になってから避妊手術をしていた子なのですが、10歳過ぎてからついに起こってしまったという感じです。。。

比較的小さい時期に見つかり、マージンも含めて大きく摘出したので局所的には完全摘出、脈管内浸潤などもないという病理所見なのでうまく取りきれている可能性はありますが、数年間は転移などが起こってこないか十分な注意が必要です。


猫の乳腺癌は悪性のものが多く、様子を見ているうちにどんどん増大したり転移したりしていくので、小さいものであっても見つけたらなるべく早急に摘出する事をお勧めしています。当然、麻酔に耐えられないような全身状態でなければの話です。。。
犬と同様、生後なるべく早期に避妊(不妊)手術を行っていればこの病気になる確率はぐっと減らす事ができます。発情によってニャーニャーうるさく鳴く事もなくなりますので、子供を作る予定のない猫ちゃんは是非早期に不妊手術をする事をお勧めします。


また、乳腺癌の早期発見には普段から前胸部から下腹部をくまなく触ってあげる事が大事だと思います。そして、しこりを見つけたらなるべく早急に動物病院を受診し、小さいうちに手術をするのが一番だと思います!!!

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2013年7月10日 水曜日

脾臓腫瘍の犬の1例

先日、脾臓腫瘍によってCRP 20以上という激しい炎症を起こしている犬がきました。内科的な治療で少し状態を改善させてから脾臓摘出手術を実施。
脾臓摘出には以前も記載した血管シーリングシステムが大活躍しました!!!画像のように脾臓中央部の腫瘤と大網が癒着していて、過去に炎症が起こっていた事がわかります。
術後経過は良好で、あとは悪性腫瘍でない事を祈るのみですが...。




脾臓腫瘍は増大してくると破裂する事も多く、血様腹水貯留(血腹)が起こっている場合は輸血しながらの緊急手術になることも少なくありません。
早期発見には健康診断としての腹部エコー検査が重要かと思います。ある程度増大していれば腹部触診やレントゲン検査でも発見できますが、早期発見にはエコー検査で脾臓全体を詳しく見るのが一番です。

具合が悪いときの検査はもちろんですが、調子が良くても定期的に健康診断を受ける事をお勧め致します。特に高齢の子では注意が必要です!!!

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