軟部組織の外科手術

消化管疾患
消化管疾患

動物は食べ物でない異物を一緒に飲み込んでしまうことがあります。これらは嘔吐や下痢をひきおこしたり、腸閉塞をひきおこして死に至ることもあります。このとき内視鏡検査で、食道や胃の中にある異物を確認し、可能であれば腹部を切開することなく、そのまま摘出します。
しかし、胃や腸管の中にある異物が、出てこない場合は腹部を切開して異物を摘出しなければなりません。手術後は通常3日から1週間ぐらいの入院が必要になります

異物症例集

子宮蓄膿症
子宮蓄膿症

子宮蓄膿症とは、子宮における細菌感染症のことをさします。大腸菌などの細菌がメスのワンちゃんの膣から子宮内に侵入して異常繁殖し、そして炎症がひどくなって化膿、しまいには子宮内に膿がたまるほど悪化する病気です。
この病気になりやすいのは、避妊手術を受けていない中高年期のメスのワンちゃん、ネコちゃんで、出産経験がない場合の方が発生率が高くなります。子宮蓄膿症では、この細菌の毒素によって肝不全・腎不全などの多臓器不全に陥ってしまうケースもあります。一旦発症してしまった場合、放置すればほぼ死亡する怖い病気です。

やっと動物病院で診断した時点では、既に体が弱っていて、手術しても死んでしまうこともしばしばありますので早期発見が大切です。

会陰ヘルニア
会陰ヘルニア

会陰とは肛門と生殖器の出口周辺の部分をさしますが、この会陰部の筋肉の容積が種々の原因により減少し、隙間ができると、そこから膀胱、腸管、大網、腹腔内脂肪などがとびだしてしまい、ヘルニアになるケースがあります。

これを会陰ヘルニアと言います。親からの劣性遺伝やホルモン分泌の関係が原因に挙げられますが、いまだに不明な部分は多い疾患です。発症は中年以降のオスのワンちゃんがかかりやすく男性ホルモンが関与しているとみられています。

症状としては、便秘のようにウンチが少しずつしかできなかったり、排便時に痛がったり、肛門の片側、あるいは両側が腫れていたりします。また、膀胱が脱出している場合には尿が出にくい場合があります。会陰ヘルニアの場合空いた隙間をうめる手術が必要です。

膀胱結石
膀胱結石

膀胱結石とは、おしっこ中に含まれる成分が結晶化し、その結晶がどんどん集まり、固まって膀胱の中にできる大小さまざまな「石」をさします。
そのような結晶や石が尿道内で詰まると、おしっこが体外に排出できず、腎臓に逆流して命にかかわることもあります。

この結晶化を防ぐためには、ふだんから水をたくさん飲み、オシッコをたくさんしていれば、それらの結晶は体外に排出され、結石化しにくくなります。

膀胱結石は、いったん結石化しはじめると少しずつ巨大化して、尿道より大きくなることも少なくありません。小さい結石の場合、雄のワンちゃんの尿道に詰まってオシッコが出なくなるケースもあります。常日頃、散歩など運動を十分にさせて、きれいな水をしっかり飲ませ、たくさんオシッコする習慣を身につけさ せると良いでしょう。なお、膀胱結石の種類や状況によって結石を溶かすことができなければ、外科手術で膀胱を切開し、結石を取り除く必要性があります。

胆嚢粘液嚢腫
胆嚢粘液嚢腫

胆嚢粘液嚢腫は、胆嚢内に過剰な粘液が貯留し、悪化すると胆管が閉じてしまったり、胆嚢の破裂が生じる病気です。

胆嚢とは、肝臓で作られる消化液を一時的に保存する袋状の器官をさします。食物を食べると胆嚢が収縮し、これによって胆嚢内に溜まった胆汁(消化液)が胆管という管を通って十二指腸に吐き出されます。

分泌された胆汁は、すい臓の消化液などと交わり、食べ物中の脂肪分を消化吸収しやすいような乳化作用をもっています。

ところが、何らかの異常が発生し、胆嚢内で胆汁成分が変化して結晶した胆石症や、胆汁成分が変化して泥々になったものがたまる胆泥症があります。

これらの異常をそのまま放置していると、慢性の消化器症状(嘔吐、下痢、腹鳴音、食欲不振、他)や、肝炎などによる様々な症状が 認められるようになります。また、末期には胆汁の流れが完全に遮断され(胆管が閉塞され)、黄疸や胆嚢破裂による腹膜炎などの致死的な合併症を起こすこと もあります。